CASE08Hさんの場合(愛知医科大学進学)

Hさんとの個別相談会。

Hさんと初めて会ったのはオリエンテーションの時でした。入塾前の面談資料を見ると、偏差値は全体で60に届いていませんでした。ある科目が極端に悪く、ある科目がとても良いという成績ではなく、どの科目も「もう一息」といった成績です。ただ、化学には苦手意識を持っていました。

得意科目がある場合はその科目を伸ばし、苦手科目をカバーするという方法をとることが多いのですが、Hさんの場合、全ての科目の底上げが必要です。全科目の底上げをするということは、必然的に各科目に時間をかけなければならなくなります。おっとりとした感じのHさんに、そのような時間をとれるのかどうか、それが入塾したときの一番の問題でした。

面談で見えてきた課題。

初めてのHさんとの二者面談。英語は、単語・熟語を覚えるのが苦手で、英文法はおおざっぱな暗記で済ませていた。理系科目は、計算が遅かったり、ケアレスミスがあったりで、良いときと悪いときの差が大きい。実は、国公立大学も視野に入れているが、地理が全く覚えられない。話をしているうちに、以上のようなことが分かってきました。

Hさんの課題は大きく2つ。1つは「しっかりと確実に暗記をしていく」こと。もう1つは「時間を意識する」こと。この点を意識しつつ、1年間上手に時間を使う努力をすることがHさんには必要です。国公立大学も視野に入れているということでしたが、まずは、夏までに偏差値を目指すこと。つまり、2次力を付けることを最優先に、一緒に計画を立てていくことにしました。

PasScanシステムを徹底利用。

英単語は課題を「PasScanシステム」から課しました。1日50問。合格点は45点。品詞も含めて覚えていく。途中までは順調に進みましたが、ある時点から難しい単語が多くなり、合格点に達することができません。それでも毎日同じ内容のテスト(順番は並び替えられています)を続けました。どうしても覚えられない時は、私の隣に座りクイズ形式で、2人でぶつぶつ言いながら一緒に覚える努力をしました。

受験までに「PasScanシステム」を3周と、苦手な単語ばかりを集めたものを2周することができました。文法も「PasScanシステム」を実施。間違った問題については、「なぜそれが間違っているのか?」ということを説明できるように指導しました。Hさんは、「PasScanシステム」を1周した後、間違った問題ばかりを集め、それをもう一度復習していきました。それに加え、長文は土日を除く、ほぼ毎日1題は必ず読むようにしました。

当たり前の大切さ。

次は「計算」です。「迅速に的確に」を目指すため、簡単な計算問題からの練習です。ストップウォッチで時間を計り、時間も意識させます。決まった時間になると、Hさんは自習室からこっそり出てきて、教務スタッフのいるカウンターに座ります。そして「計算をするー!」と一声。計算テストを実施します。それがいつの間にか、他の生徒も加わるようになり、いつも自習拘束時間の前の休憩時間に「計算テスト大会」が行われるようになりました。人と競争することで「時間」が意識でき、計算ミスが減っていきました。

地道な努力を毎日続けた結果、Hさんの偏差値は第2回の河合記述模試で64.9まで上がりました。 最後は「化学」です。本人が苦手意識を持っているので、どのように勉強させるかと一緒に考えた結果、当たり前のことをすることにしました。授業の復習を徹底的にする。これが、私がHさんに与えた課題です。化学の授業は「基礎的な内容」から始まります。まずは、そこから徹底的に復習をしていく。そして、嫌いな単元については、先生から個別にプリントを作ってもらい、それを確実にこなしていく。すると、面白いことに、本人の口から「化学が分かるようになった」との言葉が出てくるようになりました。

そして一般入試。

そのような毎日を過ごす中で、Hさんの成績は安定をしてきました。講師からも「あとは精神面だけ」というくらいにまでなりました。

そして入試。Hさんは無事に第一志望に正規合格です。合格を知ったHさんは、泣いて喜んでいました。Hさんとの1年を通して、私達が感じたことがあります。

彼女は、特別なことは一切しませんでした。当たり前のことを、毎日続けてきました。ただ、私が素晴らしいと思ったことは、「毎日同じことを続けられる意志の強さ」です。遅刻もせず、欠席することもありませんでした。おっとりとした性格でしたが、本当に意志は強かったのだと。

私が与えた課題は特別なものではなく、当たり前のことでした。でも、当たり前のことは「意志が強くないと続けられない」ことなのかもしれません。でも、当たり前のことを確実にこなし、そして毎日続けることが、合格への一番の近道なのかもしれません。

Hさんは将来、患者さんのことを思いながら、コツコツと努力を続けられる医師になることができるだろうと、私達は思っています。そんな将来の彼女に、私達は会いたいと思っています。

※合格年度は伏せています。