CASE12L君の場合(近畿大学医学部進学)

入学する前のL君。

L君がMEDiCに入学したのは、2浪目から3浪目を迎えるときでした。私立医学部の1次試験には合格するが、最終合格までには至らない状況でした。

大きな理由は、「英語」の成績でした。模試の成績を見ると、数学・理科は偏差値が60を超えていたのに対して、英語は偏差値が50台前半の状況でした。

1浪目・2浪目を通じて、英語の成績が向上したという達成感が全くなく、本人が言うには「それなりには頑張ってきた」ということでした。ただ、話を細かく聞いていくと、「基本的な部分の学習を疎かにしていた」ことが、はっきりとしてきました。

そこで、L君には学習面だけでなく、彼の性格面(継続することが苦手)まで話をして、何とか1年間を頑張り抜くようにと叱咤激励をして、新学期を迎えることになりました。

行動様式の改善から。

前期の授業が始まりました。L君と交わした目標は「英語から逃げない」ことでした。MEDiCに入学するまでの2年間は、「嫌なことからは逃げ腰になる」というのが、L君の行動様式でした。

まずは、PasScan systemを通じて、「英単語」・「英文法」の勉強を毎日継続させていきました。こつこつと途中で止めずに継続をさせていく。勉強面だけでなく、行動面からも管理を行いました。

また、英語の授業中の様子も、講師を通じて確認を行いました。苦手な英語の授業になると、睡魔に襲われるという、過去の反省があったからです。実際に、MEDiCに入学してからも、睡魔に襲われることはあったようですが、こちらの強い管理もあったせいか、頑張って授業に臨めるようにもなってきました。

理科とは違い、英語は短期間に成績が向上する科目ではありません。なので、L君には「全統模試でいきなり結果は出ないので、1年でどれだけ努力しきれるかが大切」という話を毎日していました。

少しずつ土台を構築。

L君にとって、毎日欠かさずに「英単語」・「英文法」の課題をこなすことは苦痛だったと思いますが、彼は決して逃げることはありませんでした。L君に言わせたら、「逃げたくても逃げれない環境に置かれている」という表現を日々使っていました。

ただ、継続は本当に大切なことです。英語全体の得点は十分ではありませんでしたが、文法問題や語彙力を問われる問題では正解率が高くなっていきました。また、授業内の復習テストにおいても、成績上位者に名前が載るようになりました。

また、数学と理科については、得意な単元と苦手な単元がはっきりとしていたので、英語と同様に「苦手な単元から逃げない」ことを徹底させていきました。その結果、前期を終える頃には、医学部に安定して合格できるような偏差値まで到達することができました。

読解力向上への取り組み。

「英単語」・「英文法」は、少しずつ成績が向上していきましたが、次の課題は「長文読解」になります。L君はとりわけ「内容一致問題」の正答率が極端に低い状況でした。

そこで、L君に対してある試みを行いました。それは、マーク模試よりも易しいレベルの長文問題を、英文を全て日本文に直し、設問の英文も全て日本文にして、完全な「現代文の問題」として解かせてみました。

すると、全てが日本文でありながら、その正答率は想定をはるかに超えての低い状態でした。つまり、国語力に大きな課題を抱えていることがはっきりしました。

そこで、公立高校入試レベルの国語の問題集を用いて、日々の自習の中で「1日1題」の割合で問題を解かせていきました。1冊を仕上げたら次は「私立高校レベル」を、その次は「高校準拠レベル」というように、現代文ではありますが、読解力を身につける練習を繰り返していきました。

国語の問題を解くことは、決して無駄な作業だとは考えていません。というのは、私立医学部の小論文において、一部の大学では「現代文型・資料文型」の形式で課せられることもあります。そのことも想定した上で、早い段階で読解力を上げるための指導に取り組みました。

過去問演習からの対策。

後期に入り、入試に向けての対策が本格的にスタートしました。英語に関しては、合格までの距離感はありましたが、適性を見極めるために、過去問演習をスタートさせていきました。

私立医学部の問題は、大学によって特色があり、その生徒の学力だけでは計れない部分もあります。L君に関しても同様で、大学によって英語の正答率に大きな差が出てきました。その中でも、近畿大学医学部の英語は、正答率が極端に低い状況でした。

ただ、近畿大学の英語は「文法・語法問題」の難易度が極端に高く、そこに対策を立てていくよりも、空所補充・長文問題に重点を置くのが、L君にとっては最善の策だと考えました。

そこで、推薦入試も含めた過去問から、空所補充と長文問題に特化して経験値を積ませていき、同時に近畿大学の他学部の過去問にも積極的に取り組んでいきました。

文法に関しては、あまり近畿大学を意識させず、前期から継続した「PasScan systemの徹底」に注力をし、蓄積した誤答のテストを何回も繰り返すことで、穴をふさぐ勉強を心がけていきました。

入試にむけた最後の追い込み。

英語ばかりを書いていますが、秋の終わりになって「物理」の心配が生じてきました。

これは良くある話なんですが、前に通っていた予備校とMEDiCとで物理の方法論が異なっている部分があり、本人の中で混乱が生じたからです。そのため、物理の点数について振れ幅が大きく生じてきました。

そこで、L君には「方法論の取捨選択」を指示しました。もともと、物理は苦手科目でないこともあり、L君自身の中で「A・Bの2つの方法論があったとすると、Aの方が解きやすい」という判断はできる状態でした。

また、L君から「個別指導で、他の方法論も含めて頭の中を整理させたい」という希望がありました。そこで、L君が信頼している物理科の講師にその旨を伝えると、講師からも快諾をしていただき、L君とも相談の上「回数限定の個別指導」を設定することにしました。そのことが、L君の精神的な安心感にも繋がったようでした。

最後まで諦めなかった強い心。

冬に入り、最終的な受験校の決定の時期です。このケーススタディを読んでいると、近畿大学医学部の話が中心になっていますが、もちろん、時間をかけて他大学も含めた対策も立てていきました。

その中で、私達は「近畿大学が良いか?川崎医科大学が良いか?」を、最後まで迷っていました。英語だけを見ると川崎医科大学の方が高得点が取れる。近畿大学医学部も、600点満点のうち理科の300点と数学の100点は安定して得点できる。ただ、「英語の200点でどれだけ堪えられるか」が心配でした。

ただ、L君の中では、既に「近畿大学を受験する」と言う結論は出ていました。その意志の強さを見て、私達は近畿大学医学部を受験させることにしました。

冬期講習中は受講する授業の数を調整し、過去問の対策と弱点の補強に努めていきました。年末に少し気が緩んだ部分もありましたが、叱咤してからは、入試まで気を抜くことなく勉強に励みました。

そして、入試が始まりました。近畿大学の入試直後に自己採点をしたようで、懸案の英語も6割超え・他教科は8割から9割の得点を取れていたようで、L君と私達の中では合格を確信しました。

そして無事に近畿大学医学部合格。そして、彼が私立医学部で1次合格した大学は、最終的に全てが繰上げ合格となりました。

※合格年度は伏せています。