CASE15O君の場合(川崎医科大学進学)

英語に主軸を置く。

私がO君の担任になったのは、彼が3浪目の年です。前年には1次合格はあったものの、最終合格には至らないという結果でした。

彼の弱点は、はっきりとしていて、それは「英語を文法的に捉える力」でした。帰国子女だったO君は、日本に戻ってから国際系の学校に通っていたので、英文を感覚的に捉えることは出来ても、文の整序や空所補充などの問題に答えるのは苦手。ましてや、文法問題になると・・・という状態だったのです。

幸いにも、数学・理科は過去2年間で、一定の段階までは鍛えられていたので、まずは、英語にターゲットを絞ってスタートすることにしました。

課題となる行動様式が。

数学や理科は、なるべく授業内で完成をさせて、英語に時間をかけて欲しい。

そんな思いから、まずは、通年で英語の個別指導をつけることにしました。「急がば回れ」で、英文法の本質を1から解説をしてもらい、宿題も課していきました。

同時に「PasScanシステム」を使って、英単語や英文法のテストも、継続して課すことにしました。

ここで問題になったのが、彼の「甘い」性格です。提出が遅れていることを指摘すると、「あ。やります~」と言いながら、なかなか提出をしてこない。いつの間にか、うやむやにしてしまう。

「O君はコツコツできない…」・「まぁいいやで済ませる」・「このままで1年を過ごすのか」と、講師・教務スタッフから、そのような声が入ってきました。

継続させる習慣作り。

そこで、思い切って、英文法の課題は15問に絞ることにしました。 本来であれば、50問程度が普通なのですが、とにかく丁寧に毎日続ける習慣をつけることが最優先だと考えたのです。

15問だけ予習をしてもらい、毎回同じ問題をテストを繰り返していきます。間違えたときは、一緒に解説を読んで辞書を引き、O君が完全に理解できるまで追求をしていきしました。彼には「勉強の仕方」を身につけて欲しかったのです。その努力もあって、一緒に取り組むことで少しずつ習慣化していきました。

1日15問が当たり前になると、20問・25問と、徐々にペースを上げていきました。途中、中だるみで滞ったこともありましたが、何とか半年でテキスト2周と、その誤答リストをやり切ることができました。通常の授業・個別指導と併せて、講師と連携を取りながら、英文法の土台を固めていきました。

彼のプライドを逆手にとる。

また、数学・理科についても課題が見えてきました。

日々の復習テストの得点が、いつも「まあまあ」なのです。これは知っておかなければ・・・というレベルの間違いも目につきます。

「雑ではダメ。もっと必死に穴をふさがないと合格はできない。」と指摘すると、自分の名前が上位に載っている復習テストの成績掲示を指して、「でも、ほら。ここに名前あるじゃないですか~。」などと言うばかりです。

そんなある日、O君は、十分に身についていなかった「複素数平面」の復習テストで大コケをしてしまいました。その時は、さすがに危機感を覚えたようで、先生に必死に質問していたのが印象的でした。普段、私達に見せない姿でした。

そこで、私達は、数学・理科は早いめに入試問題を渡して、彼のプライドを刺激するように心掛けました。

最大の課題。

秋になった頃、O君にとっての最大の課題に取り組むことになりました。

小論文の先生が、「O君。全然書けていないです!このままでは、小論文で落とされてしまうかも。」と飛び込んで来られました。要約問題でしたが、確かに彼の答案を見ると、何を書きたいのかが掴めません。

今年で医学部受験は終わりと決めていたので、悔いの残らないように、小論文の個別指導も設定することにしました。書き方の基本を学び、書く練習をして、何度も添削をしてもらいました。その努力もあって、入試前には何とか読んでもらえる答案は書けるようになったと思います。

そして、冬に入り、英語を中心に受験校の過去問演習にも力を入れていきました。「今まで学んだ知識をどう使ったらいいのか?」を、個別指導の先生から徹底的に頭に叩き込んでいきました。そして、問題形式別に、O君の弱点が見つかるたびに、1つずつ潰していきました。

歓喜の医学部合格。

一方で、彼の「甘い性格」は、最後まで顔をのぞかせました。直前期の授業は、多くを取りすぎずに自習中心でいこうとしたのですが、過去問を渡しても、約束通りになかなか提出しない。自習室をのぞくと居眠りしていたり、集中力を欠いていたことがありました。

「3年間を無駄にするのか!最後の最後まで必死に走り抜かんかい!」と、面談室で怒ったこともありました。

いよいよ入試本番に突入です。川崎医科大学を受けた後、O君は「正規合格は無理かもしれないけど、かなり手ごたえがある。去年とは全然違います」と、私達にきっぱりと言いました。

そして、その通りの1次合格。合格発表では受験番号はありませんでしたが、1週間後に大学から繰上げ合格の通知が。歓喜の医学部合格です!こうして、O君の3年間にわたる長い道のりは、ゴールを迎えたのでした。

※合格年度は伏せています。