CASE20Tさんの場合( 金沢医科大学進学 )

Aさんはとても柔らかい雰囲気をもった優しい子です。

ちょっと気が弱いところがあり、緊張状態になってしまうと泣き出してしまうこともありました。

しかし、医師になりたいという思いは強く、こちらが出す課題についても日頃からいっぱいいっぱいになりながらも頑張っていました。

個別指導の提案

日頃から勉強の進め方が分からない悩みを持っていたAさん。

やることが増えてくるとほとんど毎日泣くようになりました。

私がおもいきって提案したのは、日頃の復習や予習を手伝うための個別指導です。

本来であれば、ひとりでやれることですので、個別指導をつけることは無駄な出費を強いることになります。

ですが、彼女にとっては勉強の内容を教える以上に、勉強のやりかたを教える必要があります。

また、一つの科目を通して全科目の勉強の仕方を伝えて欲しいという思いもありました。

そこで、高等進学塾で経験を積んだ熱心な医学生の講師にお願いすることにしました。

近い年齢の寄り添った立場の講師のほうが、「教える」というよりも「手伝う」という方針がとれるのではないかと考えたからです。

そこで、そうした意図もふまえて、講師や他の教務にも相談し、まずは彼女が苦手とする化学の個別指導を組むことにしました。

勉強の仕方をつかんだ!

2ヶ月ほどの時間をかけることになりましたが、個別指導を通して「勉強の仕方が分かるようになった」という感想を聞くようになりました。

授業の中ではまだまだ苦労することも多かったようですが、マーク模試でも次第に点数がとれるようになり、明るい表情が増えてきました。

なによりも、一つの科目でつかんだ勉強の仕方が、他教科でも応用できる感覚を手に入れられたことがよかったようです。

推薦入試にむけての集団討論練習で…

金沢医科大学の推薦入試を受けるということを決めた時、本人の中では不安もいっぱいあったようです。

金沢医科大学の推薦入試では、基礎学力試験の他に集団討論があります。

基礎学力試験については、過年度の受験者が問題を再現してくれていたものに加え、入試担当者の方からうかがった話がありましたので、ある程度の予測ができました。

学力試験については、推薦入試まで毎日少しずつ課題を出して、添削をしていくことにしました。

それ以上に私が心配したのは、集団討論です。

ちょっと人見知りのAさんのことを考え、第一回の面接練習では、あえて普段はあまり身近に接していない男性教務スタッフに参加してもらうようにしました。

その練習で、Aさんは意見が全く言えず、自分が発言する番になったときに長時間の沈黙。

最後は、耐えきれずに泣いてしまいました。

毎日の積み重ね

Aさんは、普段の小論文の授業では自分自身の考えを持って、しっかりした文章を書けていました。

また、落ち着いて聞いてみると、面接練習の時にもいろいろ考えはしたものの、「こんなこと言っていいのだろうか」「考えていることが間違っているのではないか」と不安になり、言葉が出てこなくなった様子でした。

そこで、私が新聞記事からいくつか選び出し、入試日まで毎日、本人の口から記事についての意見を聞くことにしました。

もともとしっかり考えることができるAさんですので、意見を聞いていてもほめることばかりです。

日を追う毎に少しずつ自信を持ってきた様子になりました。

そして、集団討論の練習でも、ほめられることが多くなりました。

そして合格へ

入試から帰ってきたAさんの様子は、落ち着いたものでした。

自信はなさそうでしたので、「もう忘れて一般入試にむけて頑張ろう!」とうながし、勉強の計画をたてなおしました。

Aさんは気持ちをしっかり切り替えて、目の前の勉強に取り組んでいました。

そして、合格発表の日、Aさんの最高の笑顔を見ることができました。

入試にむけて取り組む中で、すこしずつ大人になっていったAさんは、もう泣かずに自分の道を歩いて行くことでしょう。

by A担任教務  *合格年度は伏せています